***１*** 2007.11.11 Sun 00:00 | 過去

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「ユチエル、よく聞いてね…。」
外から戻ったイレア姉さんが、ソファーで本を読んでいた私に話しかけた。
イレア姉さんがユチエルって呼ぶのは、あまり良くない事の時。
いつもならユチって呼ぶのに。
私は答えず、無言で待った。
イレア姉さんは椅子にも座らず、立ったまま話し出した。

「ムツハが、亡くなったそうよ。」
ゆっくりと落ち着いた声で、でも、はっきりとそう言った。
何言ってるの、イレア姉さん。ムツハは戦争が落ち着いたら戻ってくるんだよ。
ムツハが死んだなんて、嘘だ。
「…嘘だ。　嘘、言わないで！！」

本当はわかってるの、嘘じゃないって。
イレア姉さんはそんな冗談言わないもの。
頭ではわかってて悲しくて、涙の準備まできっとしているのに、気持ちはついてこないから。
だから、嘘だと口走る。涙も出ない。

苦しそうな顔をするイレア姉さんは、何も言わずに泣いていた。
どうして泣けるの？
私はまだ泣けないよ。

ムツハに会いに行かなくちゃ。
玄関を飛び出して、ムツハの家へ向かった。
雪が降る空の下。