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「風邪ひくぞー。」
窓全開で雪を見ていたら、窓の下から声がした。
マフラーを首にぐるぐる巻いて、いつものように飴玉を舐めている。
「何してるのー?」
風邪の件は無視して尋ねた。
「森に行ってた。」
やっぱり。
「あぁ、今日寒いから、星綺麗だったでしょ。」
「一緒に来たかったか?」
「ムツハの部屋からだって、綺麗に見えるもん。」
「まぁね。」
私もマフラーをぐるぐる巻いて、外に出た。
寒いけれど、こうして雪と星を見ながらお喋りするのが好き。
庭のベンチに並んで座った。
「雪と星、こうやっていっぺんに見られるって贅沢だよな。」
「だからムツハはこの街に来たんでしょ?」
「だからユチエルはこの街が好きなんだろ?」
ムツハお得意の悪戯っ子みたいな笑い顔で、質問返ししてきた。
ムツハの柔らかい黒髪に、真っ白な雪が降りかかっていて綺麗だった。
「雪のね、音が聴こえるの、うん。」
雪が空の上の方で生まれるとき、地上に降り積もるとき、掌の上で融けて消えるとき。
歌うような雪の音が聴こえる。
「うん、わかる気がする。」
「ムツハにも聴こえるの?」
「俺は、星の音を聴くのが好きだから。」
だから静かな森に行って星を見るんだ、そう言った。
またムツハがひとつ飴玉を口に放り込んだ。
「ユチエルにもあげるよ。」
呆れた顔をする私に飴玉を差し出して、思いついたように話し出した。
「今度さ、やっぱり一緒に森に行こう。」
「夜?」
「夜。」
「イレア姉さんがいいって言うかなぁ?」
「俺と一緒ならいいって言う、絶対。」
その自信が何処からくるのかわからないけれど、私もきっとそうだと思った。
「静かな夜の森なら、雪の音も星の音も、きっとすごく綺麗に聴こえるよ。」
あったかいコーヒー持って行こうな、そう言うムツハの笑顔が本当に楽しそうで。
晴れた夜空から雪が降る不思議な夜は、いつも二人で森へ出掛けた。
飴玉とあったかいコーヒーを持って。
星と雪の降る音を、二人でずっと聴いていた。
画:梔子様
【628/六花】
寂しがりなカメレオン娘。
星と雪と動物と甘いのが大好き。
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